アテナとの面会



童虎に連れられて、あたしは“聖域”という場所に来た。
そこは、どうも神秘的で現実離れしててなんだかテンションが上がった。
古代ギリシアの遺跡が残るそこは、私が見てきたどこよりも美しかった。


「…聖域って、変な所だね。
古代の遺跡みたいだ。
神殿とかって…。」


まるで古代ギリシアにタイムスリップしてしまったのではないかと錯覚してしまうほどの歴史的建造物の多さに私は落ち着きなくあたりを見回した。



「まあのう。
 それよりも、おぬしの名前を聞いておらんかったのう。」
「私はサナエだよ。
 なんどか大きい建物を通ったけど?」
「ああ、あれは我らの宮じゃ。
 さっきとおったのは双魚宮じゃ。
 宮の主たちは留守じゃったがのう。」


「ふぅん…。」


何が何だか本当にわからないが、ここにいると、心が落ち着く。


「さあ、ここにアテナが居られる。
 無礼のないようにのう。」



アテナって、誰なんだろう?
緊張しつつ、宮の中に入ると奥の方に女の人と男の人がいた。



「天秤座の童虎。只今戻りました。」
「御苦労でしたね。
「ハッ。
 調査のところ、この娘があの小宇宙の持ち主でした。
 冥闘士に教われていたところを保護し、こちらに連れて参りました」
「そうですか…」


その日とは綺麗な女性だった。
藤色の髪は長くて、たなびいていて、
まるで神様みたいだ。
この人がアテナなのかな?


「私は今の世のアテナです。」


童虎を見ていた女性が、私の方を見つめる。
澄んだ瞳と目が合って、同性なのにドキドキしてしまった。


「わ、私はサナエです。よろしくお願いします。」


ど、どうしよう!
あたし敬語とか全然できないよ!?

なんて、ドギマギしつつ頭を下げるとアテナさんに
「顔を上げてください」って言われた。

あたしはおどおどしつつ、顔を上げた。
すると、優しげな顔を引き締めたアテナさんがすぐ近くに近寄ってきていた。
あまりに真剣な顔に、ごくりと生唾を飲みこむ。


「サナエさん。
 落ち着いてよく聞いて下さい。
 あなたの中には大地の女神・デメテルの魂が宿っています。」


「……はぁ?」


アテナさんの言っている意味が理解できず、大層な間抜け面を晒す。
大地の女神?誰の中に?私の中に?



「…な、なんですかそれ。意味が分からないんですけど。
 神様って、何?
 ていうか、ここは何な訳ですか?」


混乱して質問を重ねる私に、アテナさんは鷹揚に頷いた。


「あなたには、まず説明しないといけませんね。
 聖戦の事を。」



優しそうな目が、厳しく光った。
なんなんだろう、心が騒ぐ。



「聖戦とは――」




ああ、なんなんだろう。
私は今、どこにいるの?







      
                 

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