噂の少女




エデンは、枯れかけた木が生える森の中にいた。
ボロボロになった姿で目を瞑っていたが、ある一瞬でカッと目を見開いた。


「っ!」
「は!」


眉間を狙った獅子座の聖闘士・ミケーネの拳が、ギリギリのところでとまる。



「ッフ…。」
「見事だエデン、いくら小宇宙を押さえてるとは言え、
 この獅子の百の拳を倒れもせずに受け止めるとは…。」
「当たり前だ。幼いころから厳しい修行に耐えてきた。
 青銅から白銀、そしていまやっと、黄金聖闘士を相手に修業できるのだからな。」
「もはや、青銅の力ではない…。
 バベルを襲撃したものどもとは…。」
「フン、比べ物にならんというのか。
 …だが、そんな奴らにアリアをッ…。」


拳を強く握るエデン。
一気に高まる小宇宙。
小さな紫電が、地面にいくつも落ち、炎が上がった。


「この闇の小宇宙が満ちる中でそれだけの力を遺しているとは…。
 さすがプリンスエデン…。」

「…今日はこのくらいにしよう、
 相手感謝する、ミケーネ。」


立ち去ろうとするエデン。
その時、ミケーネがエデンを止めた。


「青銅聖闘士の中で、蒼き炎を使う娘をご存知ですか?」
「…蒼き、炎?」


あるく足を止め、怪訝そうに振り返るエデン。


「他の青銅とは、全く違う小宇宙を持つ娘でした。
 あの娘がパライストラにいたのなら、知っているのかと思いましたが…。」
「いや、そんな奴は知らないが…。」


少なくともパライストラに青い焔を使う女など居た記憶がない。
そういった時、エデンの脳裏にあの娘の姿が映し出された。
軽薄そうに笑いながらも、他の青銅聖闘士とは違い、
洗練された小宇宙をもつ、あの女…。


「そうですか…。
 いえ、少し気になったものですから。」
「…そうか。」


再度、あるきだすエデン。
その姿を見つめるミケーネ。



その心中を知る者は、いない。











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