侵入 パライストラから、今度は聖域へ向かった。 でも、そこであたしは言葉を失った。 「此処が、聖域?」 「黄道12星座が守っていた12宮が…。」 「確かに、巨大な小宇宙の開放が感じられるな。」 どうして…? どうして? 「ぅ、そ…? なんで、何で…」 12宮が、慣れ親しんだ聖域が…無くなっているなんて…。 「師匠…セージ様・・・・皆…。」 あたしが、育った聖域が… 師匠たちが守った聖域が… 思い出の、場所が… 涙が溢れそうになるのを押さえた。 今泣いたら、皆に心配かける。 それに、泣いてなんていられないんだ。 「おい! お前また何も考えずに突っ込む気だろ!」 呆然としているあたしを無視して、光牙はマルスが立てたであろう建物に一人突撃しようとしていた。 「それはどうした! 俺は一人でもいく!」 「光牙君」 「光牙。気持ちはすっごいわかるけど少し落ち着きな」 真正面から突っ走っても、無駄なだけ。 やるなら方法を考えないと…。 だが頭に血が上った光牙にはそれすら思いつかず、見かねた蒼摩が光牙の頭を叩いた。 「頭を使えっていってんだよ!」 「いて!?」 「蒼摩。 何か考えでもある訳?」 そう尋ねると、蒼摩は小賢しそうな笑みを浮かべた。 何を考えたんだか…。 ドォオンッ 大きな音に比例するように大きな火が廊下を走っているあたしたちの目にも見える。 蒼摩の奴、随分と派手にやったね。 「分かりやすくて明快としてる作戦だよねぇ。」 「だな」 蒼摩と龍峰と栄斗の三人が表で大暴れしてる間に、 マルスの居城に侵入したあたしと光牙とユナで光牙。 彼らが陽動をしている隙に出会ったという少女を救いに行く…。 単純かつ明快だから、個人的には中々好きな作戦だなぁ。 「問題は、そこまで警備が薄くなってくれるかだけど…。」 「なってもらわなきゃ、困るわ。」 そんな会話をしてる時、廊下を出たところで二人の火星士がいた。 突っ込もうとする光牙の光牙の襟首を慌ててユナと二人がかりで引っ張って戻す。 「静かに!」 「何で隠れるんだ!」 あたしが抗議する光牙の口元を抑えている間に、ユナは近づいてきた火星士を一瞬で黙らせた。 そりゃ、見事なくらいな足技で。 てか、迷いなく黙らせたね。 「いきましょう。」 …これから、ユナとだけは喧嘩しないようにしよう。 まじで。 ← → back 141/37 |