雌雄


とうとう光牙と龍峰君、二人の争いが始まった。
…は、良いんですけど。


「実力差ありすぎでしょ。」
「そりゃあの龍峰だしなぁー。」


龍峰君に動きに無駄がなさ過ぎてびっくりする。
いくら動きを先読み出来てもあそこまで華麗によけるにはかなりの修行が必要だよね。
あたしにあれをしろって言われても、無理ですとしか言いようがないし。


「あ、やられてる。」

何も考えずに飛び込んだ光牙が龍峰君の華麗な受け流しによって地面に伏せる。
何も考えずに飛び込むからだよ…。
でも、龍座の盾かぁ。あれは、厄介そうだな。


「やっぱり、龍峰に勝つなんて無理よ。」
「属性も満足に使えねえのに…。」

二人の考察に、あたしも頷く。
そう。普通だったら勝機も何もないただの茶番だ。

「そうだねぇ。」

ごもっとも。
今のあいつに、勝てるわけないんですよ。

「でもさ、あいつは本番で行けるタイプだし大丈夫でしょ。」
「んな簡単に言うなよ。
 本番で出来たらだれも苦労しねえぜ。」

うん、そりゃそうだ。
あたしだってそんなことだったら修行なんてしてこなかったし。
てか、誰だってそうでしょ。


「だけど、あいつの場合そんな気がするんだよね。
 いざとなったら、どんなことでもできそうな気がする。」

そう答えたとき、光牙の小宇宙が爆発した。
小宇宙は眩い光となり、すべてを照らした。


「まぶしッ!?」


あまりの眩さに目を開けていられない
距離を取っていたあたしたちですらこのありさまだ。
真正面にいた龍峰君はたまったもんじゃないだろう。


「ペガサス・・・・閃光拳!」
「ぅわぁああ!!」

「!」


光を纏った光牙の拳が、龍峰にぶち当たる。
文句なしのストレート!
伊達にシャイナに殴られてなかったんだね!


「グッジョブ!光牙!」


やっぱお前はぶっつけ本番派だね!!


「・・・あの龍峰を…倒した?」
「嘘だろ…?」

驚愕する二人に、首を振る。

「ううん、まだだよ。」


言葉と同時に土埃の中で立ち上がる龍峰。
あの龍座の盾が、龍峰君の身を守ったらしい。

「流石だね、ペガサス。
 僕も・・・本気でいかせてもらうよ!」

目でも見えるくらいにまで立ち上る小宇宙…。
なんて子なんだろう。
此処まで行くのに、どれくらい修行したんだろうか。

「体力の消耗が激しいためただ一度しか使う事の出来ない・・・・・
 蘆山昇龍覇!!」

滝を上る龍のようなアッパーが光牙に正面からぶつかった。
もろに、あれを喰らったら…。
残念だけど、勝負は決まりだね。


「勝者!
 龍座・龍峰!」


勝者が宣言される。
しかしそんなことよりも地面に倒れこんだ光牙のほうが心配だった。
あの子、ちゃんと生きてる!?


「光牙!
 生きてる!?」
「ッう…」


あ、よかった。
生きてるみたいだ…。
死んだらどうしようかと思ったよ!

「ぅう…。」


目を覚ました光牙に、龍峰が手を差し出した。

「ッぁ…。」


だけど、どっちとも体力も小宇宙も使いきって立ち上がることができないで、尻もちをついた。
そりゃそうか。
あれだけ派手にやってればねぇ――…。

「龍峰、あなたわざと光牙に決闘を申しこんだわね?」


あたしと一緒に二人に近づいたユナが龍峰君に問いつめた。
あたしとおんなじ答えに、ユナはたどり着いたらしい。
でも、普通気が付くかぁ。

「あは…。」
「え?」

罰が悪そうな龍峰君と気が付いていなかった光牙。
鈍い光牙にあたしたちは答え合わせをしてあげた。

「光牙の小宇宙・・・・属性を目覚めさせるために!」
「回りくどいったらありゃしないよね。」

あたしとユナでたたみかけると龍峰君は爽やかで、すがすがしい笑顔を浮かべた。

「父さんとペガサスは確かに死闘を繰り広げた。
 でもその後仲間になり、小宇宙を高め合い、磨き合った言ったという…。
 聖闘士は、共に成長する仲間がいるから強くなれるんだ。」
「龍峰…」
「光の属性技を出すとは…すばらしい小宇宙の輝きだったよ。光牙君」
「そっちこそ。
 流石だぜ、龍峰」

熱く握手を擦る二人。
友情、生まれるだねェ…。
こんな二人だったら、さらに強くなっていけるんだろうな。
肉体的にも、精神的にも。

「あたらしい聖闘士の時代の始まりだな。
 というわけで、罰則はなしで!」


いつの間にやら来た檄先生の鶴の一声にあたしたちは盛り上がった。
いやア!さすがだわ!

「やったね!
 さすが檄ティーチャ―!
 話しが分かってるぅ!」


どこぞの頭の固いインテリなんかとは大違いだ!
やっぱ聖闘士はこうでないとね!

「オイオイ、なにちゃっかりお前まで甘んじているんだ。
 お前は後で俺の授業で特別課題を出してやるから覚悟しろ。」
「ッな!?」


課題!?
嘘だろ!?
何故にあたしだけに!?

「先生!マジで勘弁して下さい!」
「ッハッハッハ!
 聞こえんなぁ!」
 「ざけんじゃねぇ―ーーー!!」

他のみんなの笑い声と、あたしの叫びが辺りに響き渡った。
課題に関しては全く頂けないけど、こういうのも悪くはないかな?










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