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「この程度も避けられないんだね、あんた」


表情のない仮面をつけ。銀の長い髪を無造作に結んだ女の子は、だるそうに大男の上に立ち、片手で太い腕を捻りあげる。
それと同時に捻られた大男は悲鳴を上げた。


「ッいってええええええ!!!!」


「たく、まだ全然力入れてないっていうのに…なさけない。
 聖闘士になればこの程度の痛みを受けるのなんざ当たり前!
 この程度で根を上げるなんて…あんた、忍耐力ないんだね」


そう言いながら、さらに力を強めるその人。
大男は、痛みのあまり涙をこぼしていた。
仮面で顔は見えないが、おそらくそれを見てため息をついた。



「情けな…。
 それで聖闘士になろうっていうだから、笑えるね。」


さらに力を込めようとしたその人の腕を、私はいつの間にかつかんでいた。
私でも掴めてしまうくらい細い腕。
しかし、こめてる力は私とは比較にならないんだろうな、なんて変に冷静に考えてた。



「……誰?」



大男の腕を折ろうとしているその人から発せられたとは思えないくらいの間抜けた声。
仮面で見えないけど、多分表情もぽかんとしてるんだろうな…。


じゃ、なくて!


「もうその辺にしてあげて、
 その人ももう十分に反省してるはずだよ。」
「反省してるしてないはあたしが判断することだ。
 あんたには関係ない」


私が掴んでるにも拘らず、すごい力で腕をあらぬ方向に曲げようとするその人。



「駄目!」


グイッと全力でその人の腕を引っ張る。
だけど、少し動いた程度ですごい力でつかんでいる腕を放そうとはしない。



「だぁああ――――!もう!
 あんた、邪魔なんだけど!?」
「私は邪魔でいいけど!
 早くその手を放す!」
「だから!あんたには関係ないって言ってんだろ!?」
「関係はないけど、人の腕折るなんてダメ!」
「あーー!!!もう!」


その人は、空いていた腕で私の手首をつかむ。
万力に挟まれたんじゃないかと錯覚するくらいの力に驚いた。
同性に捕まれたとは思えないほど、硬く強い。


「これ以上邪魔するなら、先にあんたの腕も折るよ?」

「ッ…!」



じっとこちらを見据える仮面に秘められた表情は、多分本気なんだろう。
怖いし、痛いのはもちろん嫌だ。
だけど、引き下がるわけにはいかない。


「私の腕を折って、気が済むならそうするばいい。
 だけど、その前にその人の腕をはなして!」


私の言葉に、空気が張りつめたものになる。
表情を変えないはずの仮面が、にやりと笑った気がし


「…あんたは、こいつよりもよっぽど根性があるみたいだね。」


そう言って、あたしの手をつかむ手に力を込めた。
捕まれた腕からミシッと骨が軋んだ感覚がする。

やばい、折れる。



そう思った瞬間



馬鹿者――――――――――――――――――――ッ!!!!!!!!!!!!!!!!





凄まじい怒声と、鈍い音が聞こえた。 














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