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ボッ
人魂らしきそれは、青白い炎をあげて発火した。
「ななななっ!?」
な、なにごと!?
な、なんでいきなりもえて…
「おい、ナナシ。
大丈夫かよ?」
「!
ま、マニゴルドさん!?」
尻もち付くあたしの後ろから、金の鎧をまとった蟹座のマニゴルドさんが平然と現れた。
「マ、マニゴルドさん!いま、人魂みたいなのが・・・っ!」
「あぁ。人魂だぜ?」
「何であんたそんな平然としてられんの!?」
人魂だよ!?死霊だよ!?
なんでそんなあっさり、当然のように頷けんのォオォォォオ!?
「おいおい、俺は蟹座だぜ?
蟹座は積尸気に纏わる技使うのに、人魂一個にいちいち驚いてらんねえだろうが。」
「・・・・せきしき?」
なに、それ?
「めんどくせえ説明は色々省くけど、蟹座は積尸気…ようするに死者の通り道と関係が深いんだよ。
だから俺の技はそういう死者の魂を使えるのさ。」
…こっちに来てから、あたしが培ってきた知識とか、常識とか全くもって聞かないっていうのは何となく分かってたけど…。
これは流石に突飛過ぎだよ!
非常識で考えて、のレベルじゃねぇええ!!!
「・・・・とりあえず、さっきの奴はマジな方で人魂で、それが突然発火したのはマニゴルドさんがやったの…?」
だけど、あたしも大分そんな世界になれてきてしまったせいで…リアクションが淡白になってきた。
うん、良いのか悪いのかさっぱり分かんない。
「ああ。“積尸気 鬼蒼
”…魂を燃やす炎だ。」
「凄いね…。」
黄金聖闘士ってマジですごいな…。
こんな人と話せてるあたしって、運がいいんだろうなァ…。
「にしても…なんで人魂がフワフワ漂ってたんだろ…?
お墓じゃないのに…。」
ここ、12宮だよ?
紛れ込んでくるもんなのかな?
「ああ…。
ここが巨蟹宮だからな。
さっき言った理由のせいで、やっぱ魂が集まりやすいんだよな…。
だからときどき冥界破で魂あの世におくんねえと漂っちまうんだよな。」
「・・・・ちなみに聞くと、マニゴルドさん。
最後にいつ魂をあの世に送ったんですか…?」
マニゴルドさんは思い出しながら頬をかいた。
そして、笑顔で両手を合した。
「一ヵ月半前くらいだな!
ここんところ、長期任務でここの掃除する暇がなかったからな!」
「…え゛。それじゃ…。」
その会話をまってました、とでもいうように、どこからともなくまた魂があたしの目の前を通って行った。
恐る恐る、上を見上げると…
「うぎゃぁあああああああああ!!!!!!!!???????」
人魂が、まるで蛍の様にたくさん…大量に浮遊してた。
って、ちょ、まててえええええええ!!!
これは多すぎでしょうがぁあああァアァアァ!!!
――
「死ぬかと思った・・・っ!」
マニゴルドさんが全部積尸気 冥界破とかいう技であれを一掃してくれたわいいけど…やっぱり気味が悪くて巨蟹宮の外へ逃げてきちゃいました。
…だって、怖いじゃん?
当分巨蟹宮近寄りたくないレベルじゃん!?
「大げさだな…。」
「大袈裟じゃないから!
これが普通のリアクションなんだよ!?」
「普通じゃねえ女神が何言ってやがる。」
そんな呆れ顔で言わないで。
そんなイケメンな顔でそんなこと言われるとマジで悲しくなる。
「普通じゃないのは中身の住人だけであって、あたしは普通だから!」
むしろあたしは普通の権現といっても過言じゃないからね!?
「安心しろ、お前も十分普通じゃない頭してるからよ。」
「どういう意味だコノヤロー――!」
いま絶対おかしいっていったよな!?
コイツいま、さりげなく馬鹿にしたよな!?
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