くらっぷ!






(地下鉄からの脱出/叶野 舞花)


















懐中電灯で前を照らしながら一歩一歩慎重に進んでいく

左手に感じる確かな体温に軽く自分が安心してる


「ねぇ」

「なに?」


不安そうに声をかけられて、くんっと引っ張られる左手

何かあったのかと思って振り返る


「私たち…」

「大丈夫だよ」


言わせちゃいけない。そう直感して大丈夫と遮った

きゅっと繋がってる左手に軽く力をいれてもう一度根拠のない大丈夫を言う


「大丈夫。大丈夫だよ。私がいるし、安住君もいる。守るよ、絶対」


一語一語切ってなだめるように彼女に大丈夫を言う私は


「……ありがとう」


最低の嘘つきだろうな


「行こう!」


今度は引かれる私の左手


「急ぐと危ないよ」


笑って隣に並べば満足そうに彼女も笑った


「安住さん、どこにいるのかな…」


私じゃ安住君には勝てない









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