その日は酷い雨だった。
なのにわたしはなぜだかす
ごく外に出たくて、土砂降
りの雨空の下へ散歩に出た
。一歩踏み出すたびに、薄
紅色のワンピースの裾がじ
んわり濃く染まる。傘もあ
まり意味はないようだ。雨
足も強くなるばかりだった


帰ろうかな、そろそろ。

そんな言い表せぬ欲求も、
雨風に晒されてかいつのま
にか満たされていた。ほら
、今日は濡れて帰りたいと
かよくドラマであるじゃな
い?あんな感じだったの。
多分。

水を含んで重くなった靴を
べちゃべちゃを音を立てて
踏み出す。すると、いつの
まにか誰かが目の前に立っ
ていた。深くさした傘で顔
は見えなかったけど、スラ
ックスをみる限り、学生の
ようだ。

「すみません。」

ぶつかりそうだったのかも
しれない、そう思って軽く
会釈して横を過ぎようとし
た。そしたら、

ぱし、

「……」
「あの、なんですか?」

すれ違い際に腕を掴まれた
。傘を思わず落としてしま
って、元々濡れていたわた
しはさらにびしょびしょに
なる。うえ、気持ち悪い。

そして見上げた相手の顔は
やけに整っていて、薄く開
いた切れ長の瞳がわたしを
映していた。

「そんな格好でこの雨の中
散歩か?」
「えっ」

何でこの人、わたしが散歩
の為に外出たこと知ってる
んだ。

「「何で知ってるの?」と
あなたは言う。」
「!!」
「鞄も持たず上着も着てい
ない。気分で外に出たとし
か考えられないだろう。」

なるほど。
妙に納得してしまって、整
い過ぎている顔のせいもあ
って、わたしはこの男の子
から目が離せなくなってし
まった。

「このままでは風邪を引く
。うちがそこなのだが、良
かったらどうだろう。」
「え、でも…」
「心配しなくていい。家族
も住んでいる。それに、」

ご家族もいるならとりあえ
ずも大丈夫なようだ。
そう思いながら彼の言葉を
待った。

「濡れてでも空を見上げて
、雨を楽しむあなたがあま
りに綺麗だったので、興味
が湧いた。…否、一目惚れ
、というのが正しいか。」

その言葉と綺麗すぎる優し
い眼差しに、カアッと頬が
熱くなるのを感じながら、
「名前は柳蓮二という。覚
えておいてほしい。」とい
う言葉を聞いた。


優しく引かれる腕が甘く緩
い痺れをもっていた。



優しい貴方の読心術
(きっとわたしも恋に落ちたの。)



101130
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