なんだか嫌な噂をきいた。
隣のクラスに、あたしのことが好きと
いう男の子がいるらしい。それはいい
。けど、
「ほら、また見てるよっ」
「えぇ?あ、そう?」
友達が指差した方向には、黒光りする
スキンヘッドが見える。あんな頭はこ
の立海に1人しかいないだろう。
ジャッカル桑原。それが彼の名前だ。
彼があたしに惚れている、という話題
が、最近のうちのクラスの話題だった
。だけど、それは違うのだ。
桑原くんとは家が近い。
実はメアドも知っている。
一緒に帰ることも、家に遊びに行くこ
ともあるし、親同士も仲がいい。
つまり何が言いたいって、
桑原くんとあたしは幼なじみなのだ。
でも学校では全然関わりないし、何よ
りあたしは茶髪でピアスっていう所謂
チャラチャラした女子だから桑原くん
と幼なじみだなんて誰も思わない。
接点0だと思われてた。のだが。
携帯が不意に震えた。
邪魔なくらいじゃらじゃらと付いたス
トラップを掻き分けてメールを開く。
差出人:ジャッカル桑原
誰から誰から?と覗いてくる友達を適
当にあしらって内容に目を通す。内容
は今日うちの親と桑原くんの親がなん
ちゃらというくだらないもので、ぱく
ん、と携帯を閉じて桑原くんを見る。
確かにこっちをみていた。
けどよく見てほしい。彼が見ているの
は、あたしじゃなくて、隣にいるあた
しの友達だ。
桑原くんは、あたしの友達に惚れてい
るのだ。なのに肝心の友達は桑原くん
があたしに惚れてるなんて言っている
。昔からだけど、桑原くんは可哀相な
奴だ。
切なそうに友達を見つめる桑原くん。
ああ、
いらいらする。
なんでよりによってこいつなんだろう
。友達だけどこいつはぶりっこなとこ
ろがあるし、噂好きで口軽いし、実は
隠れデブだし。
この際はっきり言おう。
あたしが何を言いたいかって、桑原く
ん趣味悪いって話!
それにあたしは桑原くんのいいとこた
くさん知ってる。こいつより断然!
おんなのこ
(要するにあたしの片思いってわけ!)
101012