びくり、と千鶴の肩が震えた。見上げて確認するまでもなく、彼女の顔は林檎のように真っ赤であろう。そうして簡単に想像してしまえるほどに傍にいる。実感できることにほんの少しだけ頬が緩んだ。
「ひ、ひじ、か……た……さん」
消え入るような小さな声がなんとか耳に届く。視線だけ千鶴を見やれば、やはり彼女は頬を染めていた。
「あのっ、……も、もう平気です」
土方が握っている柔らかで小さな手を千鶴が引く。けれどそれを許さずに、土方は色っぽく笑った。
「悪いな、千鶴。羅刹ってえのは血が欲しくてたまんねえんだ」
否、男というものは惚れた女が欲しくてたまらないのだ。そんな本音を言葉に託して、土方はまた千鶴の指先に舌を這わした。怪我をして、真っ赤な血を垂らしている指先に。
「ひゃっ……!」
「ちづる」
いちいち反応してくれるのが可愛らしくてしょうがない。きっと彼女はそんなこと気付いてすらいないだろう。その反応がまた、そそるのだ。
土方は立ち上がって、千鶴の背中に手を回した。ぎゅっと抱きしめれば伝わってくる体温。安心する。千鶴もおどおどと腕を回してくれた。
「千鶴」
「は……はい」
「怪我しねえように気をつけろ」
「……はい」
「お前が鬼だっつうことも分かってる。だけどな、すぐに治るからと言って……痛くねえわけじゃねえだろ」
前にも一度聞いた言葉に、千鶴はきゅっと胸が締め付けられるのを感じた。この人は、本当に私のことを大切に思ってくれているのだ。
「ありがとうございます、土方さん」
それで幸せになれる。元気になれる。自然とこぼれてくる笑みを隠さずに千鶴は頭を下げた。彼もそれに安心したようで、優しく微笑した。
「ごめんなさい、お腹すきましたよね?もうすぐですから待っていてください」
「ああ……気をつけろよ」
用心深く釘を刺す彼はそう言ってさっさと勝手場を出て行った。まだ千鶴が済ませていない家事を手伝ってくれるのだろう。本当に素敵な人を好きになったな――と、千鶴は一人優しい気持ちに包まれた。
愛され夢心地
2011.07.20
ご無沙汰しております……グハアッ
随分と久々の更新ですがまだ覚えておられるでしょうか……ドキドキ
ちょっと色気を混ぜようと思ったら見事に失敗しました。私に色情は難しいです……(´・ω・`)
あああ、でもひじちづかわいいよひじちづ!
そして今回、かおりーぬと合同企画を組むことになりました(^//^)ありがとううううう!二人の趣味で溢れたこの企画を、温かく見守ってくださると嬉しいです。よろしくお願いいたします!
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マリオネット