title::求めてる


「えっ!……ひゃあっ」

どさりと押し倒されて、見えたのは不機嫌そうな土方と天井だった。

「……土方さん?」

「……ん」

不機嫌……だけれども、返事はちゃんとしてくれる。そのことに安堵してもう一度見上げれば、やっぱり不機嫌そう、でもさっきより表情が柔らかくなったようだった。

「、」

さらさらと流れる髪を指に絡めて、体を近付ける。びくりと千鶴の体が震えた。

「……千鶴」

「は、い」

程好いような、甘い香り。ふわりと鼻を擽る。こいつはいつもそうだ。こうやって人を知らぬうちに惑わせて――。

惹かれるままに首筋を舐め上げる。千鶴の唇から甘い声が漏れた。

「ひ、土方さんっどうし、た……んですかっ」

ばたばた抵抗するように千鶴が暴れる。一睨みして彼女と視線を合わせれば、焦ったように千鶴は口を噤んだ。

「千鶴。答えろ」

声に出す代わりにひとつだけ頷く。

「俺にこうして触れられるのは嫌か?」

千鶴は驚いたように大きな目をさらに大きく見開いた。表情に出ていたのか、苦しそうに千鶴が顔を歪める。

「そんなわけないです!……嬉しい、です!」

一生懸命に、全部伝われとでも言うように千鶴が瞳を潤ませながら言った。随分と、自分はズルイ男のようだ。彼女がそう答えてくれることを分かってて聞くのだから。

「幸せ、なんですからねっ」

拗ねたように千鶴は言った。なんだかその仕草がとても可愛らしくて満たされる。彼女のひとつひとつにここまで幸せになれる、いつのまにか簡単で単純な男になったようだった。それもすべて、彼女のせい。仕返しと言わんばかりに、

「じゃあ……俺が、欲しいか?」

意地悪く口角をあげて言えば、千鶴は顔を真っ赤にして

「欲しいです!大好きです!」

と叫んでくれた。ああ、もう……好きだ。





お題:求めてるわ、決まってんでしょ
提出:A爆発企画



2010.08.11 Wed
千鶴があまりにも消極的なのが不満な土方さんと本当は土方さんが大好きな千鶴ちゃんのお話でした、ありがとうございました!



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