ふたりではんぶんこ
窓の向こうに、彼がいた。大きなガラスドアが左右に分かれた途端、冷えついた空気がどっと溢れかえってきた。看板と同じ色合いの服を着た店員がチラリと視線を投げ、「いらっしゃいませー」「いらっしゃいませ」と掛け合いを演じる。その自動ドアのすぐ近くの大きな箱の前で、真剣な面持ちで立ち尽くしている彼へと足を向ける。
「雷蔵」
背後に立っても全く気づかない程迷っている彼の肩を、ぽん、と叩くと、びっくりした表情で彼が振り向いた。
「三郎!?どうしたのさ?」
「雷蔵が見えたからさ。アイス?」
「うん。こっちのカップアイスにしようかと思ったんだけど、そっちのチョコがかかったコーンのも捨てがたいなぁと思って」
開けっぱなしにすると中の温度が上がって溶けてしまうのを危惧したのだろう、うっすらと白く曇って中が見えないショーケースに顔を張り付けながら雷蔵が答えた。
「じゃあ、半分こしよう」
「えっ、でも」
戸惑う雷蔵に断られる前に、とショーケースを力任せに開け、さっき指差していた2つのアイスを取り出した。
「二人で半分こした方がいいでしょ」