「で、本気で僕の変装をして、自分の話を聞いて、どうだったんだい?」
話を持ちかけられた時は、心底嫌だったが「許可してくれなかったら、勝手にするまでだ」と言い切られ、諦めの境地で頷いた。だが、いや、だからこそ、興味もあるし聞く権利だって当然ある。だから、部屋に戻ってくるなり、そう尋ねてきた。と、三郎はしばらく頭をがしがしと掻いて(これは、僕の癖ではなく三郎の素、だ)、それからぼそりと漏らした。
「なんか、照れるな」
その言葉を聞いて、あぁ、よかった、と思った。少しは僕の話を信じてくれただろうか。
「で分かっただろ。嘘じゃないって。少なくとも、兵助もハチも勘右獲門も、お前の味方だし、お前のことが大好きだよ。まだ、満足しないかい?」
「満足…は、した。けど」
歯切れの悪い三郎の答えに、僕は「けど?」と彼から続きの言葉を連れ出そうとする。しばらく沈黙にのめり込むように口を噤んでいた三郎が、ようやく呟いた。
「雷蔵は?」
「え?」
「雷蔵は、私のことをどう思ってるんだい?」
俯き加減だった顔を上げ、切り結ばれた眼差しがあまりにまっすぐで、僕はすぐさまその言葉を口にした。 迷いもなにもなかった。ただ、一途にそのことだけを願う。
「愛されてほしい人」
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