※某チャットでお世話になった時に目覚めた(笑)音大パロです。竹久々メインだけど、勘ちゃん含む5年メンツはいつものように出張ります!ノリ重視なので音楽知識は当てにしないでくださいませ、、、



「お前、博打だな」

学園長の話を受けて、そっこー、話したくてウズウズして、似非双子を探したけど、その日は見つからなくって。結局、二人に話を聞いてもらったのは次の日だった。終わった途端、溜められた息をゆっくりと吐き下された声は、酷く掠れていた。それは、あれだ、寝起きのクロヒョウの鳴き声みたいな、そんな感じ。

「そうか?」
「だって、相手の音、聞いてないんでしょ?」

俺に問いかけてきたのは三郎ではなく雷蔵だった。三郎ほどあからさまではないにしろ、どんよりと雨が降りそうな前の雲みたいな色が声に滲んでいた。そんな呆れることかぁ、と疑問に思いながらも「おぉ」と答えると、「今からでもいい、断ってこい」と三郎が切り捨てた。

「なんでだよ」
「絶対ぇ、ハチとそいつは合わねぇって」
「ハチ、ヴァイオリン科の『久々知兵助』って知らないの?」

三郎だけじゃなく雷蔵まで言うなんてよっぽどの奴なんだろうか。今まで、ヴァイオリン科なんて関わりなかったし(というか、自分のことでいっぱいいっぱいだったし)、学内外のコンクールの入賞者で名前を見た事があるくらいだ。「名前は聞いたことあるけど、」と自然と言葉尻が消え入る。はぁ、って三郎の奴、そんなでっかく溜息を吐かなくてもいいだろうが。

「……相手もよく引き受けたよね」
「だよな。俺なら、絶対、ハチとは組たくねぇ」

さらり、と吐かれた暴言に「お前ら俺の友達だよな」としなだれると「キモイ」と三郎に一蹴された。雷蔵はといえば俺の言葉なんかなかったかのようにメロンパンに齧りついていた。もごもごと頬張ったそれを呑みこむと、「何か、理由言ってた?」とのんびりとした口調で尋ねてきた。

「え? 理由って?」
「だからさ、ハチと組む理由」
「さぁ?」

改めて兵助との(あ、勝手に兵助って呼ぶことにした)会話を思い出してみるけど、話題になったのは今後の練習日程と場所だけで。何で組んだのか、とか、どうして出たいのか、って事は一切出なかった。そうやって言われれば、気になる。けど、また、今度聞いてみるとすっか。

「さぁって……」
「あ、でも、いい奴だと思う」

絶対ぇ金賞を獲りにいこうな、って言ったら、頷いてくれたし。

「お前って、ホント、めでたいよな」
「なんだよ、めでたいって」
「まんま、言葉の通り」
「まー、でも、楽しみだよね。どんな感じになるのか」

俺と三郎の雰囲気の悪さに間に入った雷蔵は、ふ、と視線を俺の鞄の方に落とした。

「ハチ、何か携帯鳴ってるけど」
「あ、アラーム。つうか、ヤベ」
「何、バイト?」
「いや、練習」

そう否定すると二人は同時に顔を見合わせた。タイミングが合いすぎて、まるで鏡を見てるみたいに。驚きに眉が上がって目が見開かれてる。その表情まで一緒だった。息を合わせて演奏する、ってこんな感じなんだろうか、と経験の少ない俺は、これからの事に思いを寄せた。

「今から? もうレッスン、終わったよね?」
「練習嫌いなお前が?」
「おぅ。兵助に言われたんだよ『明日からでもしないと金賞取れないだろ』って」

そう答えれば、また動きを重ね合わせるように俺の方を二人して俺の方に安堵したような面持ちを向けた。「なら理解した。自分から、なんて言われたら日にゃ大雪だからな」なんて冗談をかましてくる三郎を一発殴り、俺は「頑張って」と手をひらひらと振る雷蔵に「おー」と返し、昨日、学園長に手渡されて突っ込んだままの楽譜が入った鞄を手に立ち上がった。

***

「あんま、こっちの方、こねぇんだよなぁ」

同じようなドアがずっと続く廊下を部屋番号のプレートを手掛かりに探しまわる。独り身での演奏が多い俺は、ピアノ1台がやっと入ってる小さな個室の練習部屋でしかやったことがない。とりあえずこっちの方だろう、と校舎内をうろついた。夏場でこそ開いている窓からうるさい位に聞こえてくる様々な音色も、この季節ともなれば鳴りを潜めているように思う。それでも、締め出しを食らって隙間を通って響くメロディにどことなく校舎全体がハミングしてるみたいで、心が浮き立った。

(どんな演奏する奴なんだろうな)

逸る気持ちに廊下を歩む足は自然と早くなって------突き当りの一番奥の部屋、頑丈な扉の向こう。番号を確かめる。ここだ。指を冷え切ったドアノブに掛けて。「悪ぃ、遅れた」って言葉は最後まで言えなかった。金属製の分厚いドアを開けた瞬間、戦慄が、俺の体を貫いた。



最初の踊りはカッサシオン


title by Ronde of dream

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