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【太宰】
「私は君のものにはならないよ。残念ながらね」
 その優しい一言で確実に傷ついた。いつしかその傷は、化膿して微熱を引き起こす。ゆらゆらと揺れる蝋燭の炎のように、今でも溶けそうな彼の輪郭を思い出しては、微熱に襲われた。#文ストプラス この傷口を医者は「恋煩いの印」と呼ぶ。

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