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【太宰】
 星のよう散りばめられた宝石、冷たい床に無数に転がる真珠。美しいモノは何でも与え、私をそれらで着飾った。所有者の甘美な囁きとて、私には響かなかったと云うのに。
「数多の美しきモノしかない世界で、君の美しさは見い出せないよ」
 そんな彼の言葉だけがポトリと私の中に沈んで行く。

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