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【太宰】
 仮面をつけ、今宵も誰でもない自分で貴男と出逢う。
「貴女は随分、面白い異能をお持ちのようだ」
 豪華絢爛、色香と欲望の踊るホールに似合わぬ影の落ちた顔。
「仮面の下を覗くのは野暮でしょう」
「ふふ、そうだね。なら踊ろう」
 真実を隠して、偽りで紡がれた糸に絡めとられるその時まで。

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