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【芥川】
 彼女の指先が奏で、洋琴が歌うその音は神と眠る御魂への贈る花束である。その音に聞き惚れる悪魔の姿と云ったら、実に滑稽だ。
「今日もいらしてくれたのですか?」
 一曲終え、振り向く彼女は偽りなき人。
「僕が朽ち果てる時、貴女の音で満たされるのも悪くない」
 此は願望かもしれぬが。

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