83

 

【芥川】
 花咲くよりも、秘密宿る蕾が善いと…そう教えてくれたのも彼女だったか。僕もそう思う。枯れる事を恐れている、そして何よりその美しい姿を他に見せることが苛立たせるのだ。
「花開く前、貴女の蕾を摘み取る事を赦し給へ」
 彼女へ落ちる小さな呟きは、神にも聞こえてしまっただろうか。

-73-

[*prev] [next#]
[TOP/]