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【太宰】
 彼の部屋には抜け殻の如く床に包帯が落ちている。これも彼の一部である事に変わりなく、簡単に捨てられない。散らかる部屋で必要書類を捜している彼の目を盗み、それを自分の手首に巻いて見る。
「お揃い…」
「そう愛らしい事を気軽にしないでおくれ」
 背後で囁かれる低音が甘く響いた。

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