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【芥川】
「やつがれ君、元気ー?」
 へらへらと薄っぺらい笑顔で片手を上げる女、彼女は決して僕の真の名を呼ばない。風の噂では、自分が認めた人物でないと呼ばないらしい。
「何故」
「え?」
 僕の存在を認めぬ、貴女もあの人も。妙な苛立ちに彼女の退路を塞いで追いつめてみても答えは出ないまま。

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