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【安吾】
 夏が薫る闇夜の中、彼女の頼りない手に連れられる。
「何処へ?」
「まあついて来てくださいよ」
 強引に有無を言わせず、彼女は茂みをかき分ける。
「あ、見えてきましたよ!」暗闇の中、ぼんやりと淡く瞬く灯火。
「仕事をすっぽかして見に来た価値はありますよね?」
 得意気な彼女の声音。

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