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【太宰】
「本が好きなのかい?」
 彼が私が持つ本を見つめる。
「本は私を色んな場所に連れて行ってくれるから好き」
「厭だな、私だってその気になれば何処にだって君を連れて行ってあげるというのに」
 珍しく彼は口を尖らせる。
「嘘吐き」
「ふふ、君一人で行かせないさ」
 覗く瞳に灯る光の怪しさ。

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