30

 

【太宰】
「莫迦太宰っ」
 私に馬乗りし、首に手をかける彼女。いつかは恨まれるのだとわかっていた。そこに悲しさはなかった。
「?」
 手にこもる力が弱くなって滑り、胸ぐらを掴んだ。
「どうして…一緒に連れて行ってくれなかったの?」
 胸板に縋るように泣く彼女。嗚呼、まだこんなにも君が愛しい。

-20-

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