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【燭台切】
 黒塗りお椀の縁から、紅に色づく唇瞬間が一番緊張する。湯気の先にあった瞳がチラリと向けらた。「光忠」手招きされ近寄れば、前触れなく手を取られる。
「あ、主?」
「朝餉、美味でした」
 朱の筆によって手の甲に描かれていたのは。
「…主はずるいなぁ」
 本日も花丸。

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