32
Love and a cough cannot be hid.
【福本】
「福本さんっ遅れてすみません!」
桃色が揺らぐ並木道の先で待つ彼の元へ着き、一番に頭を下げる。
「別にそれほど待ってない」
「ほ、本当ですか?」
「ああ」
頷く彼の中折れ帽のつばから零れ落ちる桜の花弁。珍しく頭上と同じ色が彼の頬にうつった。時折、彼は可愛らしい嘘を吐く。
-152-
[
*prev
] [next#]
[
TOP
/
栞
]