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【田崎】
「私、田崎さんに逢いたいって思ってました」
 彼女の小さな唇を彩る赤が張り付く。
「俺は逢いたくなかったよ」
 俺はそう青い言葉を細く吐いた。異なる温度と色が交じり合う、紛れもない本音。
「っどうして、ですか?」
 だって、君に逢う俺は嘘つきの詐欺師でいなきゃいけないから。

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