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【神永】
 芳しく滑る様な艶やかな華を好む彼が良く口にする。
「飾らない女は、匂いのしない花の様なものだ。色男の俺には似合わないだろ?」
「そうね。でも、匂いの残らない女の方が貴男にとって、都合がいいのでしょう?」
 何一つ痕跡を残さない彼が求めるのは、夜明けに溶けゆく完全な関係。

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