20

 

【実井】
 彼が煙草を吸う度に二人の関係をあやふやにする。
「貴女も吸うんですか?」
 彼から取り上げた煙草を自分の唇に挟む。
「実井が好きな物は好き」
「それは嬉しいですね」
 曖昧な距離は今日もぼやけて変わらない。再び彼の元へと煙草が戻る。口内に残るほろ苦さは、まだ好きになれない。

-140-

[*prev] [next#]
[TOP/]