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【田崎】
 美しい弧を描く桜貝の爪。それをゆっくりと丁寧に磨いている。
「そんな念入りにしなくても…」
「君を傷つけたくないからね」
 カードを操るその整った指先を見るだけで体の芯が痺れ、溺れたくなった。でも、今は違う。彼女が心から欲しいのは、名も教えてくれない彼からの傷ただ一つ。

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