10

 

【田崎】
 死が二人を分つのではない。
「私の手を離すのは、いつも貴男ですね」
 何時別れを告げられるのか、崖の瀬戸際に立たされているのは彼女。今度は自分なら掌から消え去る様にスルリと手が放れる。
「それでも、その手を取るは俺だけだよ」
 寸での所で指先を掴まれ絡めて行く。嗚呼、狡い人。

-130-

[*prev] [next#]
[TOP/]