09

 

【田崎】
 体温を繋ぐ夜が去る足音が聞こえた。「朝?」掠れた声に反応した彼は、背後の窓から溢れる淡い光を深い色の布で遮る。
「残念、まだ夜だ」
「田崎さんの嘘吐き」
 既に限界に近い。
「もう少しだけ」
 彼の瞳の奥で咲いた欲望は、閃光の様で目が眩む。カーテンが開くまで二人は濡れた宵の中。

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