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【福本】
「福本さんが経営する食堂で、働く夢を見たんですよ」
 起き抜けの彼女へ返す言葉が見つからず、湯呑みに口をつけた。彼も泡沫の夢を描いたが、其れが現実になる事はない。
「此れも食べるといい」
 彼女の好物の卵焼きを小皿へ並べて渡す。そんな日が来る事を本当は願っていたかった。

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