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【太宰】
 物理的や言霊で縛るのは簡単なものなんだろう。それをしても意味がないとわかっているが故に、欲望との葛藤が体内で唸る。
「嗚呼…またやってしまった」
 彼女の様だと形容した美しい花が手の内でくしゃりと潰れて乱れる。はらりはらり、隙間から落ちる赤が焼き付く感覚がまた愛おしい。

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