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【太宰】
「老いた時に部屋の本をもう一度、あそこで読みなおすの。あの頃とは違った視線で考えで物語の中を旅するのよ」
 素敵でしょ?と窓際を差す。澄み切った光に粉降る空間に深紅の椅子が一つ。
「その時が来るまでにもう一つ、椅子を用意しておく必要があるね」
 向いの特等席は愛しい放浪者へ。

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