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【太宰】
 好きだった、今でも縋りたいほどに。だけど時はその想いを切り裂き、気がつけば二年が経っていた。
「また、素敵な女性になったね」
 弄ぶ指先に髪を絡める放浪者。
「触らないでよ」
 跳ね除けた手に自分が酷く傷つくのがわかった。
「怒っているのだね」
 お願いだから想い出を解かないでよ。

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