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【太宰】
 最初から実らず咲かずの恋だと理解していた。
「私は君の気持ちには答えるつもりはないよ」
 その言葉と香りを思い出す。
 「そうですね。だから、この恋の終わりが怖くありません」
 悲しくはなかった、でも窓辺から見える名も知らない花よりも、ゆっくりと散っていって欲しいと思った。

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