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【中原】
「一寸、付き合え」その一言だけで馴染みの店へ。呼び出した彼は、既にカウンターで豪奢で深い憂愁を秘めた色のカクテルを傾けていた。
「懲りないのね」
「惚れたからなァ」
 彼の瞼裏に浮べられた女に今宵も勝てない。
「マスター。ベルベット・ハンマーを」
 この席は誰の為のものなのか。

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