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【太宰】
「私は本当の所、嫌いだったよ」
 自分ではない誰かを好きになるあの子が。いつも隣で炭酸水に投げたラムネが、弾けるような音が聞こえていた。泡沫を纏って溶けて行く恋に落ちた心が奏でる音色。
「耳障りでしかたがなかったのになぁ…」
 祝福の鐘が響く協会で、あの音が恋しくなった。

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