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▼ 04

 昔は何とも扱いに困る子である。有はいつもそう思っている。

 有が本を種類分けしているととことこと昔が寄ってきた。そして有を見上げると何か手伝うことはないかと問いかけた。有はその言葉に悩み、最終的に何もないと伝えた。昔はそれを聞いて静かに頷くと、来た時と同じようにとことこと離れて行った。それを見て有はしまったと頭を掻き、過ぎてしまったことは仕方がないからと本の種類分けを再開した。

 さて、申し出を断られた昔であったが、彼女は落ち込んではいなかった。なかなか強い心の持ち主であるようだ。
 昔は台所に足を踏み入れると少し高いところに手を伸ばす為の台を引っ張って流し台の側に移動させるとその上によじ登った。そして二人が一回食事した分の食器が流しにあるのを見て腕まくりをする。そしてスポンジを持つと洗剤を使って皿を洗い始めた。
 がしゃがしゃと不器用にスポンジを滑らせ、蛇口から水を流して泡を洗い流す。まずは一つ目の皿が洗い終わった。台の上に綺麗になった皿を置くと二つ目に取り掛かろうとした昔だったが、ばたばたと物音がしたので振り返った。彼女が向いた先には出入り口があり、そこには走ってきた有がいた。
 彼は息を整えてからつかつかと昔に近寄り、彼女からスポンジを取り上げた。
「あ。」
「昔。食器洗いはしなくていい。」
 ううむと考え込んだ昔に、有は同じ言葉を繰り返した。しかしまだ不満そうに考えている昔の様子に、三度目の言葉を繰り返すと、昔しぶしぶといった様子で頷いて台から降りた。それを見て有はほっと安心したように息を吐いた。
 昔は言う。
「割ったり怪我したりなんてしないのに。」
「危なっかしいんだ。」
「慣れが必要なの。」
「俺がやるから必要無い。」
「ふうん。」
 昔は不満を滲ませてそう言うととことこと台所を出て行った。おそらく本を読みに行ったのだろうと有は見当をつけ、流し台に残っている食器を片付けようとスポンジに洗剤を足したのだった。




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