▼ フォーリナーなはなし!『ヒュプノス』
フォーリナーなはなし!『ヒュプノス』
きらめくは星の彼方。明け方の空に輝く明星を、彼女は知らない。
「夜だけのをとめです」
にっこりと笑うのは、おそらく彼女だ。どうしてだろう。性別が曖昧だ。白く長い髪を揺らして、赤い目で僕を見る。
彼女の目を覗き込む。きらきらと宇宙のように輝くそれは、赤いのに、星空めいて見える。
「わたしは魔法使いなのですよ」
だから、貴方の望みを教えて下さいませ。伸ばされた手の、指先は滑らかで靭やかだ。艶を見るには、彼女は幼い。
「願いを叶えてあげましょう」
にこにこと笑っている。その無垢な笑みに、僕は絆されない。だって、彼女は魔法使いなどではない。
「かみさま、だろ」
言えば、彼女はきょとんと目を丸くする。
僕の手を掴もうとした彼女は、そっと手を引いた。
「あれ、ご存知でしたか?」
わたし、よくは知らないのだけど。まあいいかと、彼女は笑っていた。両の手を広げて、僕を誘う。
「だったら、貴方はわたしの神なる善意をご存知ですね?」
さあ、夢を始めましょう。