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▼ 白い少女

 うへへ。そんな奇妙な笑い声が聞こえてくる。外は豪雪、寮に帰れず学園に泊り込むことになった俺は最悪なことにわけのわからん白い少女と二人きりだった。
「おまえさあ、何がそんなに楽しいの?」
 そう言えば、白い少女はもちろんと奇妙な笑い声を上げた。
「だってこんな非常事態なかなかないよ。しかも二人きりなんて、ロマンスだね!」
「命の危険を感じるロマンスだな」
「うん! きみのそういうところ大好き!」
 そうしてほどほどの距離を保って、くるくると教室の中を回っている。白い少女の服は真っ白な制服で、国立のこの高校の制服ではない。何なんだこいつと思いながら俺は何とか暖かくならないかとストーブをつけた。
「あ、ストーブつけるんだ!」
「当たり前だろ」
「先生の許可ないとつけちゃダメなんだよー! いっけないんだー!」
 いけないと言いながらも楽しそうに笑いながら、いそいそと温まってきたストーブに近寄ってくる。何だ寒かったんだなと思いながら、とりあえずビスケットを渡してみる。
「え、いいの?」
「別に。腹減ると困るだろ」
「だって貴重な食糧だよ?」
「女を見殺しにするとか最悪だろ」
「おっとこまえー!」
 ありがとうと少女はビスケットを半分に割って食べる。食べながら、割った片方を俺に差し出した。
「はいどうぞ!」
「どうも。え、いいのか?」
「もともとこのビスケットはきみのものでしょ」
 だからいいの、と少女はうへへと笑った。何だこいつと思いながらとりあえずありがとうと受け取って食べる。とりあえずビスケットは今食べた分だけ。食料無し、飲み物も無し、ストーブの熱だけが救いだ。隣の少女はやいやいと何か話してるので特に評価無し。騒がしいのが、静かな校舎だと救いになるものだと俺は知った。静かな夜の校舎って怖い。
「そういえばね、きみのお姉ちゃんなんだよ」
「何が?」
「私が、きみの、お姉ちゃん」
 指をさして説明した少女に、俺は首を傾げた。
「は?」
「いやだから、私ね、こっちに引っ越してきたの。で、校舎を探検してたらきみとこうやって閉じ込められちゃったみたいなんだけど」
「その話はいらないから」
「あ、そう? きみのお父さんと私のお母さんが結婚するんだって」
 写真見たことなかったのと言われて、そういえば前に見せられた気がするなと思った。思い出したんだねと少女は奇妙な笑い声を上げた。
「私ね、ずっと弟が欲しかったの!」
「つかおまえ俺より年上なの」
「身長は同じだけど年齢はふたつ違うよ」
「そういや高身長だなおまえ」
「ふっふっふ、成長期大変だった! まだ微妙に伸びてるよ!」
「巨人にでもなんの?」
「なれたら面白そうだね!」
 と、いうことで。
「今晩は無事生き延びようね弟くん!」
「いや俺あんたが姉とか認めたくないんだけど、とりあえず絶対生き延びるから」
「うへへ」
「なんかあんた見てると乗り切れる気がしてきた」
「嬉しいな!」
「バカっぽいって意味だけど」
「ばかわいいって言われる!」
 褒めてくれてありがとうなんて笑うから、ああこいつ本当に話が通じないタイプのバカかと思いながら、学園から出た後の両親からの報告会を考えて胃が痛くなったのだった。




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