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▼ アスター(白):私を信じて下さい

エルフくんとギャルちゃん


 私を信じてください。彼はそう言った。そうは言うけどね、とアタシは言う。
「信じるなんてどうすればいいのよ」
 考えてなかったやと彼は言って、それでも繰り返した。
「どうか私を信じてください」
 そうすれば、私は救われるのです、と。馬鹿みたいに繰り返すから、アタシは笑ってしまった。
「馬鹿の一つ覚えみたい!」
「そうやってすぐ人を馬鹿にするところ、直したほうがいいですよ」
「いいのよ、キミなんだから」
 全く、変な人。彼はそう言って、長い睫毛を揺らした。
「私はただ、信じてほしいだけなのに」
「うんそうね、だから、そう、何を信じればいいの?」
 それは、と言い淀んだ彼に、アタシはじっと返事を待つ。彼の肌は白い。でも不健康そうな青白さは無い。髪は短く切ってあるけど、小さなしっぽぐらいは作れそうな長さだ。そして何より、美しいオレンジ色をした髪は、染めたものでは無いらしかった。
「実は、私は人では無いのです」
「うん。だろうね」
「知ってたのですか?!」
 驚く彼に、そりゃさあとアタシは言った。
「肌はいっつも綺麗に白いし、オマケに髪と目はオレンジ色だよ? 明らかに人間じゃないじゃん」
「それは、そうですね……」
 しまった髪色と目の色は変えるべきだったとブツブツ言う彼に、別にいいんじゃないと私は言った。
「例えばその耳が長いところとか、オレンジ色をした髪とか、変えなくていいんじゃない?」
「しかし、エルフは森の民なので」
「ここ都会の学校だね」
「そうですね……」
「まあ、出会った日にアタシがさりげなく使われてない第二美術室に案内しなかったら、そりゃ大騒ぎだっただろうね」
「そうでしたね……」
 あれ私思ったより貴女にお世話になってるんじゃないか。そう思い当たったらしい彼に、今更だなあとアタシは染めすぎて傷んだ髪をいじりながら、言った。
「ま、とりあえずここにいなよ。用事があるんでしょ?」
「あ、はい。それなりの用事がありますね」
「出会ってから一週間だけど成果は?」
「……人の暮らしを見てこいとのことでした」
「引きこもってちゃだめじゃん」
「そうなんですよね……!」
 どうしようと頭を抱えたエルフの彼に、だったらさとアタシは笑顔で提案した。
「ウチに来る? どうせアタシ寮暮らしだからさー」
 寮の面子は信頼できるし、いいんじゃないかと提案すれば、彼はいいんですかと顔を上げた。
「もっちろん。じゃあ今から連絡するから」
「え、そんなすぐに」
「とりあえずトリピーにカツラとカラコン持ってきてもらってーサトリンに使ってない部屋片付けてもらってー」
「え、えっ」
「だってその髪と目だと目立つっしょ?」
「いえあの、変えようと思えば変えれるのですが」
「それはアタシが嫌なの。せっかく綺麗なんだから!」
 ちょうど夕日に照らされた彼の髪は美しく、瞳はキラキラと煌めいている。ああ、やっぱり綺麗なヒトだとアタシは笑った。
「アタシ、綺麗なもの好きよ。だから、キミも好き」
 だから任せなと彼の胸を小突けば、面目ないですと彼は余計に俯いてしまった。だけど長い耳は赤くなっていたので、照れてるのかと微笑ましくなったアタシは、また笑った。




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