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▼ ホトトギス:永遠にあなたのもの

 柔らかな春の日差しが溢れる原っぱの中。きみと二人きり。
 優しい世界が嫌いなわけじゃないの。ただ、優しいと全てを委ねてしまいそうで、少しだけ強いの。そう言ったきみの顔は半分隠れている。高貴な人が纏う薄布越しに、きみは語る。
「いつか貴方と共になれたらと思っていたわ」
 でもね、やっぱり所詮は夢物語だった。きみはそう言って、笑った。
「でもね、忘れないで。私の心は、永遠に貴方のものだから」
 だから、さようなら。そう言って立ち上がって走り去ったきみの背を、ぼくはぼんやりと見つめる。嗚呼、何故だろう。彼女はこれから幸せな旦那様と幸せな暮らしを送るのだろう。そのうち子供もできて、きっとぼくとの恋を昔の恋として語るのだろう。
 でもどうしてか、きみの心が本当にずっとぼくのもののような気がして、ぼくはすっと胸のざわめきが引いていくのを感じ、代わりに安堵を覚えた。ああ、これで、良かったのだ。ぼくはそっと微笑んだ。
「ぼくの心も貴方のものだと、言いそびれてしまったな」
 次に会うことは無いだろう。だけどぼくは文でも出すか、なんて楽観的に考えながら、柔らかな春の日差しが溢れる原っぱを歩いたのだった。




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