※グロくはないですが、カニバもどきです。
※ミナキさんが甘い食べ物です。





ミナキくんの髪の毛を撫でる。そして身を屈ませて髪の毛を口に含んだ。しゅわしゅわと弱い炭酸のような口当たりで、髪の毛が口の中で溶けてゆく。味はほのかに甘くて、幾多もの人を虜にする味がした。最も、ミナキくんを食べたことがあるのは僕だけだけれど。

髪を切るように食べて、伸びていた髪を彼らしい長さに揃える。揃え終えたら次は爪だ。
爪は口に含むととろりと水飴のように溶ける。爪は髪より糖度が高くて、あまりたくさんは食べられない味だ。甘党な人ならたくさん食べられるかもしれないけれど、ミナキくんは僕しか食べちゃダメ。僕以外に食べさせたら、嫉妬で狂ってしまいそう。僕だけが食べられるという優越感を、消すつもりなんてない。

爪を食べ終えて、ついでに指を舐める。表皮は、ほろほろと落雁が解けるように僕の口の中へ穏やかな甘さを広げる。表皮が剥がれるとひりひりするらしく、ミナキくんは少しだけ嫌な顔をした。それすら、愛おしくて。

「ねえミナキくん」
「なんだマツバ」
「涙が食べたいな」

ミナキくんは困ったような顔をする。ミナキくんの涙は口の中で飴玉みたいな甘い塊になるのだ。飛び抜けてゆっくりと味わえるそれは僕のお気に入り。

「すまないマツバ。涙は好きな時に出せないぜ」
「そっか。それじゃあしょうがないね」

僕はリップ音と共に手首に口付ける。ミナキくんは少しだけ恐怖を感じたようで、目の奥が揺れていた。それが可愛くて、僕は手首に歯を突き立てる。表皮がほろりと解けて、ぷつりと肌を歯が突き抜けて、液体が小さな傷口から溢れる。
ミナキくんの血は果汁のような味がする。気分によって林檎や葡萄の味がして、びっくり箱のようで楽しい。今日はサクランボの果汁のような甘酸っぱい味がした。

「マツバ…」
「ああ、血はあんまり吸っちゃダメだったね。」
「干からびさせるつもりか」
「ふふ、そんなには吸わないよ」

手首から口を離して、僕はミナキくんから手を離した。ミナキくんは手を洗わなくちゃいけないなと笑っていた。





いーと、ゆー
(キミを食べるよ)

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