マツバの言葉に、ミナキは瞬く。マツバはただゆるやかに微笑んでいた。発言と表情の不一致に、私は首を傾げた。

「どういうことだ?」
「そういうことだよ」
「いまいちよく分からないのだが」
「分からなくていいよ」

じゃあ何で言ったのかと問うと、マツバは言ってしまっただけさと笑った。なんとも納得し難いけれどまあそれならそうとしよう。そう自己完結して、急須の茶葉を変えに立ち上がった。

勝手知ったる台所で急須の茶葉を入れ替える。そして、ふと思い立って冷蔵庫の中を確認する。今日は鍋にしようと思って冷蔵庫の扉を閉めた。別に私が料理をすることが決まっているわけではないが、何と無く今日は作ってやりたいと思ったのだ。
湯が沸くのを待ちながら、先ほどのマツバの発言を思い出す。マツバは何が言いたかったのか、と。マツバの発言の全てに意味があるわけではないが、やけに気になった。

湯を注いで急須を居間に運ぶ。マツバは炬燵で蜜柑を剥いていた。こちらに気がついて、へらりと笑った。それにつられて微笑み、湯呑みにお茶を注いで渡した。ありがとうという言葉に心が温まる。

「そういえばロトムというゴーストポケモンは電化製品に取り憑くことができるというけれど、この炬燵なんかにも取り憑けるのかな」
「さあ、どうだろうな。でもそうしたら炬燵が使えなくなりそうだから試したいとは思わないぜ」
「ああ、冬に炬燵が使えないのは辛いね」

マツバがもぐもぐと蜜柑を食べる。私もひとつ、蜜柑を手にとって剥く。口に運ぶと冷たい蜜柑の果汁が口を冷やした。体が温まっているからこそ美味しいのだろうな、とぼんやりと思う。
気がつくと、マツバが蜜柑を食べ終わったらしく、私をじっと見ていた。蜜柑が欲しいのだろうかと思い、一房差し出す。しかし、マツバは優しく笑うだけだった。よく分からず、私は蜜柑を口に運ぶ。ふと、さっきのマツバの発言を思い出す。

まさか、な。





「貴ぶべきなんだろうね、君の様な存在を。」
(ミナキくんを見てると癒されるはなし)
水魚

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