ばさりとミナキ君のマントが落ちる。その音に僕はやけに驚いてしまった。ただ、ゲンガーが机から落としてしまっただけなのに。
「マツバー」
声の方を見るとミナキ君が紅葉にまみれて笑っていた。その周りでは僕のゴーストポケモン達や、ミナキ君のポケモン達が居た。賑やかな彼らは揃って僕の方を見ていて、僕はしょうがないなあなんて笑いながら立ち上がった。
紅葉を掛け合ったり、綺麗な紅葉を探したりしていたらあっという間に指先が冷えてしまった。かじかんですらいそうな指先はミナキ君も同じらしく手を摺り合わせていた。そろそろ部屋に戻ろうか皆に言うと全員が元気に返事をした。
部屋に戻ると炬燵に入る。ゴーストがみかんを運んで来てくれて、僕とミナキ君はわこわこと皮を剥いてポケモンにあげたり自分で食べたりした。ちなみにスリーパーやゴーストは自分の手で皮を剥いていて、器用な子たちだなと微笑ましくなった。
「あと一ヶ月で1年が終わるな」
「そうだね。あっという間の1年だったなあ」
「同意だぜ。」
ミナキ君はそう言うと来年の抱負というか、来年やりたいことをつらつらと語り出す。僕はそれを半分ぐらい聞き流しながら自分は来年何をしたいか考える。
(修行とジムの整備と…)
「あとはそうだな。マツバと今年より過ごしたいと思うぜ」
「え?」
僕は驚いてミナキ君を見た。ミナキ君は微笑んでいた。
「スイクンを追うつもりだが、もう少しマツバと会いたいぜ」
「う、うん。ありがとう?」
「マツバは来年、何がしたいんだ?」
にこにこと笑うミナキ君は僕をからかっていたりするわけじゃ無いらしい。僕は平常心を精一杯装って、来年やりたいことを告げる。
「修行とジムの整備、かな」
「マツバらしいな。」
ミナキ君はそう言うと温かいお茶を淹れに向かった。その背中に、僕はぽろりと言ってしまう。ミナキ君は立ち止まって、ゆっくりとこちらを振り向いた。その顔はほんのり赤くて。
「ま、マツバ…?」
「き、聞こえなかったことにして!」
「わ、分かったぜ!」
ミナキ君はそう言うと早足で台所に向かった。
僕はずっと一緒に居たいな
(修行が足りないってことかな…)
(び、吃驚したんだぜ…)