薔薇が枯れていた。それを私は眺める。

私は珍しく実家に帰っていて、庭に出られるテラスに居た。そっと、枯れた薔薇に近寄る。何故かその薔薇だけが枯れていて、他の薔薇を含めた花々は美しく咲き誇っていた。私は出て枯れた薔薇の茎を折る。枯れても薔薇の棘は痛くて、そういえばこの薔薇は白薔薇だったのか、なんて思う。花弁は枯れていても、所々白かった。

(枯れた白薔薇か…)

私は丁寧に茎から棘を取りながら考える。たしか花言葉なんてものがあった筈だ。枯れた花にすらあるというのは、花への執着に感心してしまう。いや、枯れた花が薔薇だったから花言葉があったのだろうか。人間は薔薇という花を特別視しているようだから。

気になったらすぐに調べたくなる性だから、私はすぐにノートパソコンで調べる。もちろん室内に入ってから、だが。

「ほう…」

目当ての枯れた白薔薇の花言葉をみつけて、私は感心する。よく考えたものだ。その心意気に私は少し気分がよくなって枯れた白薔薇に薄布を軽く巻く。目指すはエンジュの奴の家だ。

あら出掛けるのですか、何時にお戻りですか。なんて声をかけてくれたお手伝いさんに私は明日の午後と答えて家を飛び出した。たまたま何時ものスーツを着ていてよかった。着替える時間がもどかしかっただろう。たとえマツバに会いたいという理由でも、外に出ればスイクンに会う確立がゼロではないのだ。スイクンと会った時にキチンとした格好をしていないなんてあり得ない。さあ、スイクンがいない今はマツバを優先しよう。マツバ、マツバ、渡したいものがあるんだ。マツバは当然私に伝えてくれたし、私だってとっくに伝えたことだけど、それを一回伝えたから全てが伝わるとは思っていないんだ。





枯れた白薔薇『生涯を誓う』
(たとえ側に居られなくてもずっと寄り添っていたいんだ)
薔薇に関する花言葉20題
NightmareGirl

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