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夢主視点


 朝食をいただいて、今日は部屋でじっとしていることになった。疲れているだろうからという審神者さんからの計らいだ。だけれどそれでは暇だからと話し相手に獅子王さんや手の空いた刀剣男士さんたちが顔を見せてくれることになった。
 私に当てられた部屋は殺風景な部屋だった。とりあえず布団があって、机もある。着替えもあるので問題は何も無いだろう。獅子王さんは何か欲しいものがあれば教えてくれと笑った。多分、頼ることは無いだろう。あるものだけで充分に思えた。

 刀剣男士さんたちと話をして過ごすこと半日、食事もして、夕方。獅子王さんと過ごしていると、審神者さんがやって来た。
「ヒカルちゃん、落ち着いたかな? 」
「はい。」
「不安だと思うけれど、ちゃんと帰れるから心配しないでね。」
 柔らかな表情で語る審神者さんに、そういえばと私は申し出た。
「走りたいのですが、夜にランニングする許可をもらえますか。」
「ん? んん? いいけど……。」
 困惑した顔の審神者さんを気にせずガッツポーズをとる。ランニングシューズは登下校で履いていたものがあるから良しとして、服装はどうしよう。制服はスカートを短くしているので走るだけなら問題ないが、ジャージがあると嬉しい。さっき見た衣装棚にジャージがあったのでそれを着てしまおう。何、ズボンや袖長ければ折り曲げればいいし、いっそ上半身はTシャツでも構わないだろう。
 かちかちと考えていると、獅子王さんが声をかけたきた。
「走るのが好きなのか? 」
 その問いかけに私は首を傾げた。好きとか、嫌いとか、とは。
「私にとって走ることは生活の一部なんです。」
 走らないとそれこそ落ち着かないと告げれば、審神者さんはふふと笑ってから本丸から出なければと許可をくれたのだった。

 早速走りに行くのでジャージに着替えると宣言すると、獅子王さんが自分も行くと準備しに部屋を出て行った。
 審神者さんは優しい人なのと笑って、ジャージやTシャツを取り出してくれた。どうやらサイズはぴったりのようだ。
 部屋を出て、空を見上げる。夕方の赤い太陽は沈み、深い青の空に丸い月が覗いていた。
 隣にやって来た審神者さんが楽しそうに言った。
「今日は満月ね。」
 明るい月夜なら安心して走れるわね、と。
 それを聞きながら満月を見上げる。なんだか、胸がじわりと溶けるような、気がした。

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