03

夢主視点


 というわけでして。
「太星ヒカルです。少しの間お世話になります。」
 審神者さんと獅子王さんに現状の説明をしてもらい、私は名前を名乗る。どうやら名前を名乗ることでわかることがあるらしいとか。現に数人の刀剣男士さんが何かに気がついた顔をしていた。何に気がついたのかは分からないけれど。
「ヒカルちゃんは私の隣部屋で暮らしてもらうわ。政府に対応してもらうまでだから、期間は分からないの。」
「はいっ!主さん!」
「どうしたの愛染。」
「俺たち刀は何て呼べばいいんだ? 名乗ったってことは加護があるんだろ? でも加護があっても俺たちが名前を呼ぶのは問題あるんじゃねえの? 」
「あー、そうかもしれないけれど。」
 審神者さんは呼び名つけるかと面倒くさそうにしていて、私はよく分からなくて首を傾げる。すると隣にいた獅子王さんが名前と言霊、呪術について教えてくれた。なるほど名前は一番短い呪詛と。
「問題ないと思うよ。」
 そう言ったのは大きな黄緑色の男の人で、審神者さんは石切丸とその人を呼んだ。
 石切丸さんは難しい顔をして言う。
「愛染くんには見えないかい? 」
「愛染明王の加護で"そういうの"分かってるはずなんだけど、よく見えねえんだ。」
「そうか。私も鮮明には見えないな。けれど、私が見る限り相当な加護があると見えるよ。」
「主さんは?」
「私? 少なくとも名乗っても問題ないと思えるような加護があることは分かるわ。ただ、それぐらいね。謎っちゃあ謎ね。ヒカルちゃんは何か心当たりある? 」
「いえ、特には。」
「そうかー。」
「ただ、あの、加護って具体的には何なんですか? 」
 私の質問に審神者さんはそこからかと遠い目をした。まあ現代ならそうだよね、とも。石切丸さんが口を開いた。
「そうだね……君たち人間にとっては、神様が護ってくださっているとか、見守ってくださっていて必要ならばすぐに手を貸してくださるとか、そういう状態のことだよ。ヒカルさんは多分何か行動をしたことで何らかの神に目をかけられている。きっと悪いことではないから安心するといいよ。」
 その説明にそうですかと納得した。でも神様なんて身近にはいなかったし、それを言うなら神と名のつく付喪神の刀剣男士さんたちに囲まれた審神者さんの方が加護が強そうだ、なんてことを考えた。

 そんな風にぼんやりしてたら、いつの間にか私の世話係のようなものを獅子王さんと愛染さんが担当することに話がまとまっていた。理由は、獅子王さんは最初に私と会ったから、愛染さんはこの本丸の初鍛刀の刀とやらで古株だからだそうだ。よろしくなと笑った二人は何だかとても心強く感じた。別に不安とかじゃなかった筈なのだけれどな。ちょっと、不思議だ。

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